視覚障がい者が一人でヨット操作 音声案内はアプリ 誰もが競技を楽しめる社会を
視覚に障がいのある人たちが一人でヨットを操るセーリング大会があります。そこには、情報技術によるサポートがありました。
三重県伊勢市で行われたセーリング大会。参加した人たちは「視覚障がい者は誰かと一緒にスポーツをすることが多い。しかしブラインドセーリングは機械の補助がある。海に出たら一人。スリリングなところがあって面白い。なかなか味わえない体験」と醍醐味を話します。
視覚に障がいのある人たちが一人でヨットを操ることができるよう、アプリが支えています。
(アプリ音声案内)「上、やや左前87」
ヨットの位置情報をもとに、アプリが海上に設置されたレースマークの方角と距離を音声で案内します。
システムを開発したのは当時、鳥羽商船高等専門学校に通っていた濱口宝さんと、ユニバーサルデザインの小型ヨット「ハンザ」を使った活動を展開するセイラビリティ三重です。
濱口さんは「高専に通っていた当時、障がいのある人は社会活動や趣味など、楽しみが失われてしまうのではないかと思っていた。学校で学んだ技術を駆使して何とかできないかと開発した。障がい者の人がレースマークまで行けたところを見届けられて良かった」と話していました。
さらに今回の大会では、新たな機器も試験的に使われました。
阪南大学の末田航教授は「ヨットはセールを動かして操作する乗り物。セールの出し入れ具合をガイダンスしてくれる音のセンサーがある。風向きで音色が高くなったり低くなったりする。セールを見なくても操作できる」と導入した機器を説明していました。
情報技術などを活用し、目指すのは障がいの有無に関わらず、誰もが一緒に競技を楽しめる社会です。
参加した人たちは「機器が発達しインフラも整い、どんどん障がいの垣根が低くなっている。環境を用意してもらっているからこそ、障がいのある当事者が積極的に外に出て行くことが大事」と話します。
セイラビリティ三重の強力修会長は「一つの助けでいろいろなことが広がるということは、他分野でもできるという可能性がある。アプリをアップデートしてより使いやすくし、多くの人に喜んでほしい」と話していました。
日本セーリング連盟の舩澤泰隆副会長は「自動ではなく手動で回航を入れられるようにし、ヨットの位置をみんなが見られるようにすれば混乱が少なくなると思う」とさらなる技術の構築を提案していました。
誰もがセーリングを楽しめるよう、挑戦はこれからも続きます。